コロナウイルスのために、多くの人が一斉に「オンラインショップを開いてオンライン化を」と考えだしました。今や「オンライン化」は生き残るために必要不可欠となっています。ところが、単にオンラインショップを開いて待っていればお客様が見つけてくれるというわけではありません。多くの人が一斉にオンライン化に舵を切ったから、オンラインの中はライバルが溢れ、一気にレッドオーシャンに。ただ待っていてはお客様はやってきてはくれません。
「一体どうやったら、たくさんの人にオンラインショップに来てもらえて商品を見てもらえるんだろう・・・」
そのことに頭を悩ませている人は多いのではないでしょうか?
2020年5月6日、GW最後の休日、日本初(もしかしたら世界初?)のハンドメイドオンラインマルシェin Remoを開催しました。本当にありがたいことに、出展者45名、チケット販売総数700越えの大盛況、終わってみれば、日本最大級の「オンラインでのマルシェ」になりました。
実は準備期間はたったの2週間でした。
たったそれだけの期間で、これだけ多くの人が集まってくれたのは、コロナウイルスのために全国的にイベントが開催できなくなって本当に困っていた方が多かったということだと思うのです。
オンライン接客でコミュニケーション販売という新しい形
第0回HOM(ハンドメイドオンラインマルシェ略称)では、全く初めての試みにも関わらず、売上を上げた作家さんも多く出ました。オンラインですので、作品を画面越しに見せることはできても、お客様が手に取って試着してみたり、使用感を試してみたりする、というようなことはできないにも関わらずです。お客様は距離を超えて全国の作家と交流を楽しみ、ショッピングを楽しまれたのです。一体あの時、あの場で、何が起きていたのでしょうか。
コロナ前、今までのお買い物の形態は、以下の二通りのどちらかでした。
①リアル店舗に行って実物を見て、接客を受けて買う
②オンラインショップで調べて買う
①は実際の商品を手に取って、五感を使って商品を知ることができました。同じ形の洋服でも、自分に似合う色、自分の好きな肌触りなど、同じ商品の中でもより自分に合うものを選びたい場合には、リアル店舗に足を運ぶのが最も近道。
②はパソコンや家電製品など、どの商品を選んでも均一で、リアルで選ぶ必要性の薄い商品です。ネットで注文すればすぐに配達される利便性の高い方法です。
しかし、ネットショップは基本的にはお客様がショップへ来てくれるのを待っている「待ちの戦略」。お客様へショップ側からアプローチする手段はメルマガやLINEなどがありますが、それすらも「読んでくれるのを待つ」戦略です。
しかし、ここに第三の選択肢があらわれました。
それが、
③オンライン接客でお客様とコミュニケーションを取りながら販売する方法です。
オンライン上のマルシェにお客様に遊びに来ていただき、画面越しとはいえ、作家がお客様やファンと交流し、コミュニケーションを深めながら作品を販売するスタイル。
このスタイルは、上記の①とも②とも違う、全く新しい可能性に満ち溢れています。
ここからは、マルシェにいらっしゃるお客様のニーズを読み解き、それぞれのお客様へどんなアプローチが有効かを分析していきます。
マルシェin Remoのお客様のタイプ別接客方法
まずはマルシェin Remoにいらっしゃるお客様をタイプ分けしてみます。
1、お目当ての作家さんがいて、どのブースで何が欲しいか、ほぼ決まっている人
2、作家さんと知り合いではないけれど、普段からSNSなどで素敵な作家さんを見ていて、SNS上では作家とコミュニケーションを取りつつ、普段はオンラインショップで買うけれど、マルシェに興味があってきてみた人。
3、通りすがりの一見さん。コミュニケーションはちょっと苦手。
1、お目当ての作家さんがいるお客様
このタイプの人が求めているのは、コミュニケーション&ショッピング。
作家さんから直接説明を受けたり、交流を楽しんだりしながらお買い物がしたい方です。
すでに作家さんのファンである人も多いので、おなじみの感覚ではないでしょうか。
作家さんから提供できる情報には、ネットショップやSNSでは発信していないちょっとしたエピソードやお得情報など。個人的な趣味のお話や雑談の中から、お客様にベストな提案を、お客様と一緒の目線で楽しみながらすることができます。
たとえ実際の商品を手に取ることができなくても問題はあまりありません。すでに以前からその作家さんの作品を購入したことがあり、信頼関係ができていたりしますので、作家さんが丁寧に手触りを説明したり、使い方を見せたりして説明すればしっかりと伝わります。
提供できる商品は、お客様の個性や希望に沿ってカスタマイズされた商品や作品。お客様のためのもの、というプレミアム感も出しやすいです。ただし、限られた時間の中で交流できるお客様の数は限られていますから、ある程度高単価の商品にすることも必要になってきます。
もしちょっと困ったことが起こるとしたら、Remoは1ブースに作家以外に5名のお客様が自由に出入りすることができる点でしょうか。自分以外のお客様がいると言い出しづらい話(体形やサイズなどデリケートな話題)がある場合があります。その場合は、後日予約を取るのも一案です。お客様に特別扱いを受けている気持ちになっていただけるというメリットもありますし、限られた時間の中で少しでも多くのお客様と交流を持てることにもつながります。
2、普段からSNSなどで素敵な作家さんを見ていて
マルシェに興味があってきてみた人
このタイプのお客様は、基本的な情報は自分で集めていくタイプです。普段から自分が欲しいものが何かをよくわかっていて、しっかりと事前に情報を精査し、本当に買いたいのを見定めてから購入されます。そのため、気になっている作家さんのHPやネットショップはチェック済み。納得のいく情報が得られ、自分に必要だと思えたら、作家に会わなくてもネットショップで購入するタイプです。
このようなお客様へのアプローチに有効なのは、マルシェ以前の段階での施策です。HPやネットショップ、各種SNSの情報発信の流れを今一度見直して整理しましょう。各種SNSやブログなどから入ってきたお客様が、最終的にどこに誘導されるのかを決め、流れを整えます。(例:作品販売がメインならネットショップ、お教室運営がメインならHPなど)
その最終的に来てほしい場所を、「おしゃれにたのしく」みえるようにします。
その中をぐるぐる回っていろいろな作品をみたりすることがエンターテイメントになるように。そしてその中に「いつでもお問い合わせください」と、お客様がお客様の都合で自由にコンタクトが取れるよう、門戸を大きく広げておきましょう。また、各種SNSでの発信においても、お客様の素朴な疑問に楽しくお答えするQ&Aを掲載するなど、いつでもウェルカムな発信を定期的に行います。
そんなお客様が、「お気に入りの作家がオンラインでマルシェに出展する」という情報を自然な流れで得られるように、オンラインマルシェの情報もわかりやすく掲載します。
単なる告知にとどまらず、
・Remoとは何か
・どのようにアクセスすればいいのか
・チケットはどこで買えるのか、無料なのか
・アクセスには何が必要なのか、スマホ?PC?カメラは必要?
・顔出ししなくても大丈夫なのか
・事前にRemo体験会があるのか
・予約制なのか
・実際に画面越しにどのように作品を見て選べるのか
・決済はどのようにするのか
・作品はどのように送られてくるのか
など、お客様の立場に立って、できるだけ細分化して具体的にわかりやすく情報を提供すると、お客様に安心感をもってチャレンジしていただけるでしょう。
また、普段からネットショップをご利用いただいているお客様への特典など
「あえてイベントに行ってみよう」と思えるきっかけになるようなものを用意するのもいいかもしれません。
3、通りすがりの一見さん。コミュニケーションはちょっと苦手な人
Remoに入ってもマイクもカメラもOFF。黙ってブースを回り、ブース内での会話をじっと聞いているタイプのお客様が少なからずいらっしゃいます。
ブースを出して一生懸命に説明をしている作家にとっては、「本当に聞いてくださっているのか、どんな人なのか、何が聞きたいのか」などがわからなくて不安になります。リアルイベントでの接客と違って、相手の顔が全く見えない状況での説明というのは、意外とつらいものです。
そこで、まずはこのタイプのお客様の気持ちになってみましょう。
Remoには、ブースに入るとき、「ドアをノックする」というような機能がありません。(この機能があったらいいのに!)
ですから、お客様はいきなり知らない人同士が会話しているブースへ入っていくことになります。緊張しますよね。とはいえ、ブースに入ろうと決めたわけですから、作家さんのお話に興味はあるのです。このブースでは何を販売しているんだろう、という事前知識がない人が多いです。このブースでは、どんな作家さんが、どんな風に説明しているのかを、まずは自分が顔出しするより前に知りたい・聞いてみたい、と思っているわけです。
このタイプのお客様には、画面共有などを利用して、いつでもブースの情報が見えるようにしておくことがまず大切です。視覚で自由に読める情報を、わかりやすい場所に提示しておきます。リアル店舗での販売でも、できるだけ店員との接触を避けようとするお客様がいると思います。おすすめしようとすると逃げていく人ですね。このタイプのお客様は、気になる商品があると、そのポップや、お店のメニューなどの情報をじっくりと読んで検討されます。
とはいえ、せっかくご入室いただいたお客様に、お声掛けは必要です。お声掛けのコツは、お客様への返答を求めるお声掛けをしないこと。
「こんにちは、どちらからいらしたのですか?聞こえていますか?」などの何らかの返答を求めるお声掛けより、
「ショップの情報はこちらにまとまっておりますのでゆっくりお読み下さいね、気になることがありましたら遠慮なくお声掛けください」等、相手の返答を要求しない話しかけが有効です。
このタイプのお客様が、勇気を出して顔を出し、作品を購入する可能性は低いかもしれません。それでもお客様は、作家さんが他のお客様と交流するようすを通して、作家さんのお人柄や作品の魅力を見ています。お客様の心に印象的に残ることで、後日つながっていく可能性もありうるのです。HOM終了後、ご自身の個展をZOOMなどで開催し、そこへお客様をつなげていった作家さん、ご自身のオンラインレッスンにつなげていった作家さんなどもいらっしゃいます。オンラインでのマルシェは、終わった後もご自身の作家活動につなげていける色々な工夫を考え出すことができます。
終わりに
「オンライン接客でコミュニケーション販売」という手法は、まだまだ誕生したばかりです。上記に書いたような事例なども、第0回のHOMに参加して、新しいことに果敢にチャレンジしてくださった出展者のみなさんの知恵の結晶です。そしてこれから開催される第1回でも、また新たなチャレンジがたくさんのブースで行われ、どんどん新しい知見が増えていくことでしょう。
最も大切なのは「お客様やファンの皆様が、何を求めているのかをしっかり見ること」です。手法は色々なオンラインツールを使いますが、手段はあくまで手段です。オンライン化で本当に大切なのは、想像以上に人間臭い部分です。どうやったら安心していただけるか、どうやったら楽しんでいただけるか、それが最も大切なことなのです。
第1回オンラインハンドメイドオンラインマルシェは6月12日(金)日本で初のバザーが鹿鳴館で開かれた「バザー記念日」に開催されます。当時、1万2千人もの人々がバザーに足を運んだそうです。それだけ、普段あえない人や、新しい文化に触れられる機会がスペシャルなことだったということだと思います。
あれから138年後の現在では、自由に距離を超え、あえない人とふれあえるマルシェをオンラインで開催できるようになりました。
皆様と一緒に、この新しいチャレンジに挑んでいけたらとワクワクしています。皆様のご参加を心よりお待ちしています。
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